主催者からのご挨拶(2023)

玉村和己

公益財団法人神奈川芸術文化財団 理事長

新たに「YPAM-横浜国際舞台芸術ミーティング」と名称を変えた本催事も、今年で3回目を迎えました。改めて、この催事を支えて下さる多くの皆さまのご尽力に深く感謝申し上げます。

世界有数の舞台芸術プラットフォームとして国際的に高い認知を確立している「YPAM-横浜国際舞台芸術ミーティング」は、さらに地域社会に立脚し持続可能な催事であることを目指し、国籍やキャリアに関係なく作品を発表できる場として発展してきた「YPAMフリンジ」により注力することとなりました。

また、海外との往来もようやく自由になり、海外の文化団体やアーティストとの協働による上演を最大限バックアップし、上演会場の提供をするだけでなく、主催団体として劇場一丸となって本催事に取り組んでまいります。

未だ世界政情も不安定な中、舞台芸術の可能性を追求し続けるこの催事が、地域の皆様と芸術文化との新たな出会いと交流の場となるよう心より願っております。

近藤 誠一

公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 理事長

社会における芸術の役割の一つに、コミュニティ形成のための役割があると思います。特に集団でおこなう舞台芸術は、創り手と受け手とが時間と空間を共有することにより、人と人とのつながりを深め、コミュニティの共通の基盤を形成するという重要な役割を果たすものです。

YPAMとなり3年目、より横浜の地域に積極的につながるプログラムを実施するとともに、年間を通じて地域のコミュニティと舞台芸術に関わる人々が交流する「YPAMフリンジソサエティ」が立ち上がります。劇場はもとより、普段は上演に使われることのない多様なスペースでパフォーマンスが展開され、地域における舞台芸術活動の一層の盛り上がりが期待されます。

YPAMが持つ国際性と横浜の創造性、地域性とが合わさり、舞台芸術の持つ力による様々な効果が、地域の方たちとともに大きく外へと広がることを願っています。

Photo by Hideto Maezawa

丸岡ひろみ

特定非営利活動法人国際舞台芸術交流センター 理事長
横浜国際舞台芸術ミーティング ディレクター

TPAMからYPAMに変わり3回目の開催となる今回。この間にはご承知のように世界的なパニックが起こり、それまで私たちが取り組んできた2つのもの、つまり「国際交流」と「舞台芸術」にかつてない大きな制約が課されることになりました。その制約がその後段階的に取り除かれることになったとしても、このような大きな制約を課すこと、それを受け入れることが可能であることを知ってしまったという経験とその影響は長い間残存するだろうというつらい見通しのもと、TPAM2021、YPAM2021、YPAM2022ではライブパフォーマンス作品の委嘱と上演を欠かさず実施しました。今年のYPAMディレクション唯一のプログラムとなる、6つの断章から成る大作、オル太『ニッポン・イデオロギー』の委嘱と世界初演は、YPAMにとってはこの間の試みの集大成と言えますが、この作品そのものはそのような文脈も食い破って今後さらに展開・増殖してゆく可能性も孕んでいます。

YPAMフリンジは、登録条件をライブパフォーマンスに限定し、会場を横浜・神奈川に限定したにも関わらず、2021〜2022年にも一定以上の演目数を確保することができました。今年の参加公演募集は11月15日まで続きますが、9月の時点で昨年比約30%の登録数増加が確定しています。自由な表現が自発的に集まる場としてのYPAMフリンジは、YPAMディレクションと同様に、舞台芸術プラットフォームとしてのYPAMの本質を成すものです。その継続性を高めるべく、昨年からフリンジに関わるアーティスト、制作者、観客の寄合所「YPAMフリンジセンター」を通年営業してきました。提供している無農薬・無肥料の玄米食や自然派ワインも好評です。また、今回のYPAMのオープニングでは、ここ数年をかけて準備してきたサポート団体「YPAMフリンジソサエティ」を始動。アーティストがフリンジ参加を通じて、作品を発表するだけでなく、アーティスト相互の横のつながりやプロフェッショナルとのネットワークを構築できるような環境とサービスを提供していきたいと思います。

YPAMエクスチェンジは、YPAMフリンジセンターに近いフォーラム南太田(男女共同参画センター横浜南)で実施します。国内外の舞台芸術関係者が主体となり、様々なシンポジウム、ミーティングやプレゼンテーションが多数実施されます。2021年から続けている来場/オンラインのハイブリッドによる実施も継続します。横浜市内に戸塚、あざみ野、南太田と3館存在する男女共同参画センターは、その名が示すミッション(英語名称ではGender Equality)に長期的に取り組んでいる重要な施設であり、ここでYPAMのプログラムを初めて実施できることを大変嬉しく思います。

また、横浜と海外の芸術文化団体との特別協力によりお届けするYPAM連携プログラムでは、イタリア文化省の支援を得て、これまであまり日本に紹介されることのなかったイタリアのコンテンポラリーダンスを4作品紹介するほか、横浜能楽堂の狂言普及公演も新たにラインナップに加わりました。

年末の押し迫る時期の開催ではありますが、自由な表現のためのプラットフォームへの皆様のご参加を心よりお待ちしております。末筆になりましたが、参加者の皆様、関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。