主催・共催者からのご挨拶

丸岡ひろみ
特定非営利活動法人国際舞台芸術交流センター 理事長
横浜国際舞台芸術ミーティング ディレクター
撮影:前澤秀登

本催事は1995年の第一回開催から数えて、今回で30回目という節目を迎えます。30回を重ねることができましたのは、これまでご参加、ご協力くださった多くの皆様のお力添えの賜物と心より御礼申し上げます。

舞台芸術の国際プラットフォームとして歩んできた歴史の中で、私たちは時代の変化や要請に応じ、その内容を少しずつ変化させてきました。

今回、国際舞台芸術プラットフォームとしてのYPAMの中核をなす交流プログラム「YPAMエクスチェンジ」や、多様な作品が集まる公募プログラム「YPAMフリンジ」は、従来の取り組みを踏まえさらに充実させ、より多くのご参加・ご協力を賜りつつ実施いたします。一方で、主催公演のプログラムについては変更を加えました。

まず、これまでも若手制作者によるプログラミングの実験、ゲストディレクターを迎えての国内外の作品紹介、新作委嘱、国際共同製作など形を変えて実施してきた「YPAMディレクション」を、実験的フォーラムとして再構築します。アーティストやプレゼンターの世代交代、旅費や技術費の高騰、育成プログラムやアーティスト・イン・レジデンスの広がり、国際舞台芸術セクターの思想的・経済的状況の変化に伴って、「作品」という基本的な概念そのものが大きく変化していると私たちは感じています。新しいYPAMディレクションは、その根本を見つめようとする試みです。初回となる今年は、近年東・東南アジアで国際的なアーティスト育成プログラムに取り組んできた三名を「サポーター」に迎えます。アジアの多くのプラットフォームと同様に、このフォーラムは通訳を介さず英語で実施します。

そして、今年新設する「YPAMショーケース」も、YPAMディレクションの問いと無縁ではありません。完成度の高い作品をプロフェッショナルと一般のお客様に広く紹介するフェスティバル的プログラムであると同時に、「作品」という概念を高度に成立させたモデルとして、YPAMディレクションの参照項になることも期待しています。今回は、これまでも協働してきたヨコハマダンスコレクションにも二演目でご参加いただき、合計七演目九作品をご紹介します。その中から、ここでは韓国の振付家、アン・ウンミ氏による『北朝鮮ダンス』に少し触れたいと思います。

私がこの作品を観たのは2018年、ソウルでの初演でした。アン氏は初演当時の作品資料に、「最近、両朝鮮は65年以上続いた紛争の終結に至るかもしれない歴史的な一歩を踏み出しました」という趣旨の言葉を寄せています。この年、両国は初の首脳会談を実現し、対話を通じた融和への期待が高まっていました。その期待が叶ったか叶わなかったかに関わらず、優れた同時代的舞台芸術においては、時代が映し出されるだけでなく、その中に「希望」が提示されるものだと私たちは考えます。

日韓国交正常化60周年の今年、30回目の開催となるYPAMでこの作品を皆様にお届けできることを喜びと感じるとともに、このような機会が成立する、そのこと自体を皆様と分かち合えればと思います。

末筆ながら、YPAM2025開催にあたり関係者の皆様、ご参加・ご登録くださった皆様に厚く御礼申し上げますとともに、ご来場を心よりお待ち申し上げます。

磯崎功典
公益財団法人神奈川芸術文化財団 理事長

「横浜国際舞台芸術ミーティング(YPAM)」は、リニューアルから、今年で5回目をむかえました。この神奈川の地で、国内唯一また世界有数の舞台芸術プラットフォームである本催事を、支えてくださる多くの皆さまのご理解とご尽力により開催できることを深く感謝申し上げます。

私どもは、主催団体のひとつとして、本催事のさらなる発展を目指し、地域の関係者の皆さまと協働しながら、新たな文化の創造と発信を図ってまいります。

当財団が運営するKAAT神奈川芸術劇場では、世界の同時代的な舞台芸術を紹介するYPAMショーケースや、劇場のエントランスであるアトリウムを活用したYPAMフリンジをはじめ、施設を最大限に活かした多彩な作品の上演を予定しております。

分断や対立が世界を覆う今、舞台芸術の可能性を追求し続けるこの催事が、地域の皆さまと芸術文化との新たな出会いの場、そして国際理解を深めるための架け橋となることを心より願っております。

近藤誠一
公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 理事長

舞台芸術は、地域の歴史や文化、人々の営みに深く根ざしながら、時に新たな価値を創造し、地域社会に活力をもたらす力を持っています。地域における創作活動や、そこに集い暮らす人々との協働は、芸術の可能性を広げると同時に、地域の魅力を再発見する契機にもなります。

TPAM から YPAM になって5年目、国際的な視点を交えながら、地域に根ざした表現や市民との協働、そして舞台芸術がここ横浜で果たす役割について、継続的に考えを深めてまいりました。

横浜という港町は、古くから多様な文化が行き交う場所であり、その歴史と風土が芸術の土壌として豊かな可能性を育んできました。YPAMでは作品やプロジェクトを通じて、舞台芸術関係者と市民が自由な表現を享受できる環境が醸成され、新たな表現を生み出す共創と対話の場となっています。

私たち一人ひとりが、観客として、創り手として、あるいは支え手として、舞台芸術の未来を形づくる存在です。YPAMでの出会いが、皆さまにとって新たな視点やつながりをもたらす機会となることを願っています。

山中竹春
横浜市長

アジアを代表する舞台芸術プラットフォーム「横浜国際舞台芸術ミーティング(YPAM)」が、今年も横浜で開催されます。国内外から横浜にお越しいただいた舞台芸術関係者の皆様、観客の皆様を心より歓迎するとともに、YPAMを舞台に多彩な交流が生まれることを期待しています。

1995年に「芸術見本市」として東京で始まり、30回目の記念すべき本年は、台湾とイタリアからの支援を受け、世界トップレベルのアーティストによる公演が実現します。また、参加自由の舞台芸術フェスティバル「YPAMフリンジ」が市内各所で展開され、ジャンルや国境を越えたライブパフォーマンスをお楽しみいただけます。舞台芸術がもたらす感動と発見を、ぜひ多くの皆様に体験していただきたいと思います。

横浜のまち全体を舞台に、国際的な舞台芸術の魅力を味わえる特別な17日間を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。